明日の集会について等。ガニエール・ランチ Vol. 2
2011年12月12日

民主主義って何だろう@9ヶ月目

先週の日曜日にあった、下院選挙以来
モスクワでは、そしてロシア各地でも、デモや集会が開かれている事は
先日の記事でもお知らせした通り。

10日(土)は、日本でも(少〜〜しだけ)報道されていた様なので
ご存知の方も居るかもしれないが、今までの規模を遥かに上回る
デモ、集会が、ロシア各地で開かれた。

サンクト・ペテルブルクでは1万人越え
モスクワでは2〜15万人と、
幅広過ぎてどこに真実があるのか分からない情報もあった。


そもそもこの流れのキッカケは、4日(日)の選挙。
プーちゃん率いる統一ロシアは、何とか過半数に届いたと言う結果にはなったものの
実は数々の不正があった事が次々に暴かれ、
その映像がYouTube等で公開され、人々を怒らせた。

これは大きなキッカケだけど、あくまでもキッカケであって
ロシア人のプーちゃんに対する怒りの素地は元々あった。

「来年の大統領選で、このままプーちゃんになったら、
黙ってたら後12年はプーの時代かよっ!いい加減にしろや、ゴラァっ!」

って、多くの人が思ってた。

だから、簡単にバレちゃう様なナリフリ構わない不正をしてまで
票の操作したのに、辛うじての過半数が精一杯。
統一ロシアは大きく議席を落とした。
クリーンな投票が行われてたら、どんな結果になったか。
想像するのは難くない。

そんな風に舐められたロシア国民達が、
政権に対する怒りの声を大きく爆発させたのが10日だったのだ。

もちろん、反政府系の集会はこれまでもずっとあった。
主催者側は(私が知る限り)常に平和的集会を心がけて行っていたはずだが
大抵、必ずと言って良い程、拘束される人がいた。
先だって行われた、5(月)6(火)の集会では
実に500人以上が拘束された。

それ程までに、当局は反政府系の集会に対しては厳しく。。。
理不尽な程に厳しく、時に不当なまでに厳しく対処していた。

土曜日の集会も、相当数の警備が配備されたであろう事は
ライブ中継を見ていても明か。

また大量に拘束されるんじゃないか。。。
体制派の人達と暴力沙汰になるんじゃないか。。。
そして、大きな暴動へと流れ込んでしまうのではないか。。。

大方の人がそんな風に心配していたのではないだろうか。

終わってみると、その予想を大きく覆し

全くの平和的活動だった。

救急車一台、出動する必要がなかった。

しかも途中、右派から煙弾や火が群衆めがけて投げつけられる等の煽りに対しても
参加者は随時、消火したり、警察に通報したりと適切な処置をして
決して挑発には乗らなかった。

小さな諍いさえも報告されていない。

警察も今回は、むやみに拘束や逮捕をせずに
「民主主義の警察たるべき行動をしてくれた。」
と、集会の主催者側も賛辞を贈っている。
実際、モスクワでの拘束者は、なんと「0」
一方、
サンクトでは30人程度等、他の地域でもやはり拘束者が出た。

この集会は、最近の例に漏れず、主にFacebookやTwitter等
SNSを使って呼びかけられ、ここまで膨れ上がったのだが
その過程で、しっかりと「平和的活動」であることも啓蒙されて行ったらしく
なんてクリアに、その意図が功を奏している事か。

ここまで徹底して平和裏に終始出来たのはきっと、

人々の「変えたい思い」が強いから

ではないか、と感じた。

人は、何かを痛烈に成し遂げたいと思う時
多少の邪魔が外野から入っても
その信念を貫いて行ける強さを持つんじゃなかろうか。

でも、その“信念”を持つにはきっと、沢山の裏付けが必要なんじゃなかろうか。
その裏付けは
テレビタレントの誰々が行ってたから、とか
友達がみんなそうだから、とか
今が辛いんだから、とにかくコレじゃダメなんだ、とか。。。
そんな表面的な事では、きっと、ない。

自分の頭で考え、
それには、常に興味を持ち、
そして、知る。
自分の意見を持ち、
人の考えを聞き、
何度も何度も、
上に行ったり、下に行ったり
右に行ったり、左に行ったりしながら
少しずつ、少しずつ、重ねたり、はぎ取ったりして行く。。。
それでも尚かつ、心に残って動かないモノ。

そんなモノに裏付けされて、人は“信念”的なものをもつのじゃなかろうか。

ロシア人は、近代史に於いて、沢山の苦悩の時を経験して来た。
その事は、人々に、
明日のパンの心配の次くらいには、自国の未来を憂う思いがあったんじゃないだろうか。
知識や情報の差こそあれ、みなが政治に興味を持ち、憂い
だからこそ、アグネトードという、
政治を揶揄する高度な小話が発達したんじゃないだろうか。

政治に関われるか関われないかは別として、
人々の政治への感心は常にあった。。。と。
バカみたいに儲かってたバブリーな時期は分かんないけど。。。

今回の動きが、今後どのように政治に影響をもたらして行くのか、
私なんかには分からない。
でも、何らかの影響はある筈。。。
少なくとも、土曜日の集会の様子をロシアの国営放送は報道したと言う。

たった1週間程度で、これだけ大規模な集会に出来たロシア人。

何だか少し、羨ましく思った。

色んな意味で、この国はマダマダだと思う。
今回の不正選挙だって、民主主義国としてあってはならない事。
でもその事に、今回人々は声をあげた。大きく。
国民の力で、国を変えたいと願う人が集った。


翻って日本は。。。

もちろん、日本でこんなあからさまな不正なんかない。
民主主義になってまだ20年程度のロシアと比べたら
日本は民主主義国家としての大先輩。。。

。。。の筈だが、日本で本当に民主主義が成熟しているかと言えば
どうもそんな風には思えない。

今日は、3.11から9ヶ月目で、今年最後の11日。

私の様な無学&ノンポリ(ただし、ワイドショーレベルでは好き(ーvー;))
『みんしゅしゅぎ』について考えるなんて、甚だテーマがデカ過ぎる。
でも、震災を機に、その後から現在に至るまで起きている様々な事をきっかけに
どうしても考えてしまう『ミンシュシュギ』というシステム。

薄々気が付いてはいたけど、どうも「政治に参加してる感」がない。
どうも「政治家が国民の声を拾ってくれてる感」がない。
どうも「政治家が国民の代表してくれてる感」がない。

でも、その政治家を選んでいるのは、間違いなく国民。

思ったのは。。。

アタシ達、テキトー過ぎたんじゃないか、って事。

政治家に一票を投すると言う事は、その政治家が何を訴えているのか
国民自身がよく勉強しないといけない。
その一票は、自分自身の責任。
「いつも◯◯党に入れてるから」とか
「テレビで良く見る人だから」とか
「選手時代に応援してたから」とか
そんな理由で一票を投じて、いざ当選したら、自分が投じた一票の責任も顧みずに
「あいつはダメだ!」。。。と。

1.2億の人口で、9千万人ノンポリとかでは、
民主主義は成り立たないのではないか、と。
いや、割合はもちろん適当ですよ。。。(^^;)

だからそんな国民に選ばれた政治家に、
国民の声をすくい上げられる訳ないんじゃないか、と。

今日も、日本各地で脱原発のデモが開催されたらしい。
都内では5千人規模だったとか。
しかし少なくとも、こちらで見られる日本のテレビのニュースでは
1秒たりとも取り上げていない。

こんなにも多くの人が訴え、不安に思っている問題を
議論らしい議論も行われずに、再稼働がなされ、輸出の準備がなされている。

私は、国民の声を聞こうとしない政府を責める。
優先順位が自分のそれとかけ離れた政府を責める。
納得しない国民達に、説明する事を忘れて安全と言い、基準値を押し付ける政府を責める。
「復興」や「福祉」というマジック・ワードを隠れ蓑に
より簡単に、より確実に、より弱い者から搾取しようとする政治家を責める。

でも、自分も責める。

なんでもっと、色んな事に興味を持って接して来なかったんだろう。
なんで「政治に参加してる」という強い意識も持たないまま
「政治に参加出来ていない」と文句ばかり言って来たのだろう。

日々に忙殺されて、考える時間がない。。。

そんな言い訳は誰にでも出来るし、考えない事は簡単。
また、誰かの意見に迎合し、盲目にそっちだけを信じるのも簡単。
考えて、自分の意見を持つことは、疲れるし、時間が掛かるし、メンドクサイ。

でも、そうする事でしか、民主主義なんて成り立たないんじゃないだろか。。。

そんな事を、何かに付けて考えてる。


ロシア人がどうなって行くのか、とても興味深い。
もしかしたら、この動きが「第2のペレストロイカ」の様な大転機になるなら
このモスクワで、その歴史的瞬間の目撃者となれたら、そんな光栄な事はない。


同じ様に、私達の世代が、本当の意味での『民主主義』を成熟させる事ができたら。。。

そんな風に考えるキッカケとなったのが
不正選挙ではなく
多くの多くの、とても多くの人の命と生活。。。だからこそ、
今、変えたいし、変わりたい。。。と、切に願う。

来年もきっと、グジュグジュ考えます。
ないアタマで。。。


今年最後の11日に寄せて。


りり拝
2011年12月11日 @モスクワ

参考記事:
http://en.rian.ru/russia/20111211/169905796.html
http://en.rian.ru/russia/20111210/169588733.html
http://rt.com/news/showcase-protest-moscow-bolotnaya-517/
http://www.themoscowtimes.com/opinion/article/editorial-we-are-people-citizens/449649.html
投票のやり直し等の要求が通らなかった場合、
2週間後の12月24日に再び集会が予定されています。



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この記事へのコメント
1. Posted by Kazue   2011年12月13日 20:26
ロシア人すげーよ。
変化への第一歩は確実に踏み出した と思う。
政治を語る・考えることが、一人ひとりの内面の問題じゃなくて、シニカルに言えば「モードなこと」 または「普通のこと」 表に出して堂々としててよい問題になった瞬間を見たんだと思う。「ロシアのパリスヒルトン」たるクセニヤ・ソフチャクが会場にいた(登壇したのでなくフツーにいた)のも、ある種シンボリックな出来事だったよね。
もう後には引けません。ぷーたんが大統領に返り咲いたとしても、世間の目は厳しいよっ!
2. Posted by toma   2011年12月15日 10:45
りりさんの気持ち、重く受け止めました。
私も、反省している所です。
原水爆禁止とか、平和とか、なんとなく関わってきたけど、原発の問題の重要性には、気付かずにきてしまった。
非人道的・・・と言われる核兵器。
その危険性がわかっているなら、原発の危険性だって、もっとわかっていなくちゃいけなかった。
もちろん原発には、反対してきましたが、こんな事態が起こる事は、あり得ないと思っていた自分がいます。
自分の頭で、ちゃんと考えてきたんだろうか・・?
人が言っていることに、なんとなく、賛成したり反対したり・・・この『なんとなく』が問題なんですよね。

自分で考えても、『なんとなく』言いにくかったり、全体のムードに流されていく傾向が日本人にはありますね。
このままでは、結局変わらないと思うのだけど・・・

短いロシア人との付き合いでも感じたけど、彼ら、議論する時は喧々諤々、すごい勢いで、まくしたてあっているけど、ちゃんと方向が出てきて、決まったとなると、さっきまでの喧嘩腰はどこへ?って言うくらいスパッと、決まったことをやり始める。
それは凄いなって感じました。
日本人よりは、はるかに、民主的な話し合いができるのかも・・・
3. Posted by りり   2011年12月15日 20:04
Kazueちゃん、
ホント、スゴいよね。
もちろん、これでプーちゃん以外の人になるのかどうかは、かなり疑問符だけど、国民がこれだけ声をあげているのだから、今までと同じ扱いではうまくいかないのは目に見えてる。
既に何かが変わっていると言っても良いと思うんだよね。ドラスティックにないかないかもしれないけど。
クセニヤちゃん、そんなフツーに居たんだね。それも大きな意味を持つよね。『持たざるもの』からだけの不満じゃなく『持てるもの』たちからも純粋な不満が表明されている。
頑張ってほしいね〜、ロシア人!!
4. Posted by りり   2011年12月15日 21:03
tomaさん、
コメントありがとうございます。
私なんて、猛省ですよ、猛省。(ーー;)
原発の話なんて、「変人」と思われるのが嫌で、ずーーーっと長い間無意識に封印して来ました。政治の事も、キチンと色々考え様と思い始めたのは、この数年の事です。

でも、今、日本で反省しなくて良い大人なんているんでしょうか。
私達はきっと、便利過ぎて、平和過ぎて、何かを真剣に考え、ぶつかり合って、傷つき、そして思いやると言う事を忘れてしまったんだと思うんです。
この期に及んでも「忙しい」事が理由になって、考えない人が沢山います。反原発でさえ、全体のムードでやってるんじゃないか、と思えてしまう様な人の発言も見かけます。
ぶっちゃけ、とても腹が立ちます。
空気を読み過ぎて、何も言えなくなる、言わなくなる風潮も怖いです。
でも「あの人達の姿は、私そのものではないか。」とも思うんです。
どういう意見であれ、それが自分の意見でなければ、議論の場ではそんな信念はメッキの様に剥がれ落ちます。そこがしっかりしてなければ、議論だって、政治家を選ぶ事だって、何かを変える事だって難しいと思うんです。民主主義って、結局、一人一人が大人で自立してないと無理ですよね。社会主義は一部の人の支配で成り立つけど、民主主義は全員参加じゃないと、成り立たないと思います。

そういう意味では、ロシアでは一人一人の中に、民主主義が育ちつつあるのかもしれません。

私達日本人は。。。どうでしょうね。。。^^;

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